休まず営業し続けるコールセンターの円滑な運用を実現するには災害復旧計画が不可欠です。災害の種類と規模などで軽微なものから重篤な被害迄様々ありますが、それぞれに対応する方針と対応策をドキュメント化しておかねばなりません。
対応策を考えるに際してイメージしやすいように、東日本大震災、熊本大地震を通して大規模災害時にセンターが直面した課題は次の通りとなっています。
● より広範囲・詳細な防災計画/BCP(事業継承計画)の必要性
● 大規模災害時のルーティング手順と体制の再整備
● 権限移譲、代替マネジメント方針整備と訓練
● 災害時のビジネスの範囲の定義
● 通信キャリアによる受発信制限への対処策
● 携帯電話の脆弱性の克服方法
● 従業員・家族間の安否確認・連絡方法
● 従業員・近隣住民へのライフライン供給
● 顧客である被災者/関係者の本人特定
● 液状化被害の影響度の予測と診断
● ビルの耐震設計と揺れへの対処
● セキュリティと避難方法
● 交通手段のマヒ・運休による影響予測と対策
● 計画停電への対処
● 長期化する中での要員確保と緊急対策の継続
● 放射能汚染の影響の対策
● 心理的不安とストレスへの対処
加えて新型コロナウィルスの感染対策として次の課題が浮上しています。
● オフィス設備・共用部分の殺菌・消毒、換気の奨励
● 体調不良社員の出勤・待機・医療機関での検診ルールの策定
● 家族・同居人の感染対策
● イベント参加、旅行等への参加自粛要請
● 社員・得意先へのセンター訪問自粛要請
● マスク、衛生用品の常備
● 保健所・病院との連携(検査体制確保と感染拡大防止策の強化)
コールセンターは元来電話やメールの変動やオペレータの人員変動等に対処することができるように柔軟性を持った設計がされているものなので、多少のトラブルに対する耐性は備わっているはずです。
一般的には下図のレベルⅠ.Ⅱ.に記載したような一過性の課題に対処するすべは具備していると考えて差し支えないでしょう。ただ、従来インフルエンザ等を想定していた「ウイルス」被害に関しては、被害程度をLevel Ⅱ.としていましたが、今回の新型コロナウィルスではLevel Ⅳ.にまで被害程度を拡大解釈する必要が出てきました。それらを含めてレベルⅢ.Ⅳ.の大規模な影響を及ぼす事象に対していかに事前の想定をしておくか、が重要となります。
個々の事象による影響度が異なるので、レベル別に責任体制を区分することも必要であり、影響範囲と期間を予測することも事前にしなければならない想定です。もちろんこれはセンター組織だけで対応することができない問題であるため、社内外の関連組織との連携による復旧対策を事前に講じることが必要となります。対応手順を明文化することと併せて防災教育・訓練を実施することも計画しておかなければなりません。
そこで作成すべきは危機管理計画です。対象領域(設備/IT/情報/セキュリティ/関連組織などを想定し、対処の優先順位と品質への影響(ルーティング/スキル/自動化/その他)を考慮し、リカバリー手順や責任権限を誰が持つかといった組織と役割を明確に明文化しておくことが不可欠です。
リスク評価を含め広範囲かつ総合的な計画を策定しましょう。